野球が面白くない

プロ野球に関心がない人にとってはどうでもいい話である。
 とにかく野球がつまらない。ぜんぜん面白くない。腹が立つ。情けない。という声が周りに充満している。贔屓チームが負け続ければ至極当然のことである。まるで打てない、守れない。しかも戦前予測でダントツの優勝と言われながらの最下位争いなのだから、入れ込むファンのストレスは極限まできており、ファンの10倍いや100倍もの年棒をとっている選手に対しては、思わせぶりだけするな、恥を知れ、腹を切れとまで言う。こちらもひがみ根性も手伝って、わかるぞ、そのとおりと同調する。憤懣やるかたなし。もう贔屓の引き倒しである。
 勝ち負けにかかわらず熱い応援をするファンは立派であるが、並のファンはもう野球なんか見たくもない、全然面白くないとなってしまう。
  ファンの一人として、不甲斐ない試合は見たくないし、面白くないというのもよくわかる。
 が、しかし、またかまたかと負け続けてもらうことによって、諦めというか、しらけた気持ちも手伝って遠く離れて冷静にゲームを見ることができるようになる。すると、負けるから面白くないのではなく、野球そのものが面白くないことに気づかされる。薄っぺらでただ同じことの繰り返しで、まるでビデオを音声なしで早送りして見るようなものである。観戦するスポーツとしての価値が低いのだ。これでは、クライマックスシリーズなどを導入して勝敗の決着を延ばしながらファンを何とか引き付けなければならないはずである。優勝の価値は低くなり、どこがいつ何を制したかわからなくなる。その場しのぎの飴玉商法ではすぐに飽きられるに決まっている。

では、どうすればいいのか。はっきり言って、もう終わりだと思う。無理である。
 その理由ははっきりしている。野球が下手なのだ。もちろんうまい選手もいるが全体的に下手としか言いようがない。守備、バント、走塁、バッティング、金を取る見世物なら、見るものをうならせるものが少しはなければなるまい。エラーに凡プレーが多すぎる。その最大の原因は有力選手が皆米大リーグにいってしまうからだ。また、少年時代の指導方法が変わってきたことにあるかもしれない。さらに言うなら、ハングリー精神の低下も関係あるだろう。
 いずれにしても選手層が薄くて、プロといえないプレーが多すぎる。
 まあ、そう言ってしまえば身も蓋もないので、少しでも面白くするにはどうしたらいいかを考えてみる。

まず、なんといっても試合時間が長い。これを短くすることが一番である。きびきびとスピード感あふれるゲームにしなければならない。エラーをしても下手なりに懸命に次のプレーに移ることだ。照れ隠しの仕草なんぞ無用。この時間短縮については後述する。

2番目は、チーム数を減らすこと。前述のごとく選手層が薄いのだからそうせざるを得ない。
そして、試合数も減らすのである。一試合の重さを感じるためである。投手の起用もしやすくなると思う。チーム数を減らすことが無理なら、外人部隊のチームを作り、プロレスではないが、敵役(?)に徹してがんばってもらう。意外と人気チームになるかもしれない。当然日本チームには助人外人の採用はできなくする。

3番目は、鳴り物による応援は原則禁止にすることである。野球の一つの醍醐味は、球音であるとよく言われる。まったく同感である。広い球場で打球音や捕球音が響く、よく通る選手たちの掛け声が聞こえるのもいい。そしてそのあとに来る歓声やため息がまさに野球観戦スタイルではないか。ラッパや太鼓はぜひともやめてもらいたい。暴走族まがいの応援など愚の骨頂である。メガホンもどきのカスタネットもしかりである。現在でも禁止の日がわずかだがある。そうではなくて、鳴り物許可の日を何日か作って、どうしてもと言う人にサービスすればいいと思う。それが社会常識というものだ。野球好きの足を再び球場に向かわせることになること間違いない。

4番目はメディアの問題である。野球解説がマンネリ化している。エンターテイメントがあふれるこの時代に、十年一日のごときワンパターンの解説では飽きがくるのも仕方がない。
 また、テレビ放映の仕方にもほとんど工夫が見られない。投手と打者だけではなく、野手の守備位置や表情、走塁、フィールド全体などをこまめに写していけば球趣も上がろうというものである。

それでは、時間を短縮してスピードアップするにはどうしたらいいか。いくつか挙げてみる。
1. 攻守交替を短縮するためチェンジから一定時間が過ぎてもまだ第1球が投げられなければ守備側の負けとし、投手がマウンドで投球体制に入っているにもかかわらず、相手チームの打者がバッターボックスに入っていなければ攻撃側の負けとする。一定時間としては1分程度でいいと思われる。全速力の守備交代になる。
2. 投手がボールを持ってから一定時間が過ぎても投球しなければ、その時の打者には四球が与えられるようにする。(ソフトボールにはある)一定時間は10秒くらいでいいと思う。
3. 投手が打者と勝負する意志がなく、四球を予定している場合(敬遠)には、その旨を宣言することで、ボールを投げることなく打者に一塁を与える。(ソフトボールにはある)これで意味のない投球がなくなる。昔、敬遠のボール玉をホームランした打者がいたが、この頃そんな面白い選手がいるとは思えないし、もしやり損なったら洒落ですまない雰囲気がある。したがって、この方式は取り入れても良いと考える。
4. 投手交代の場合やイニングの開始前には準備投球が認められているが、これを廃止する。投手交代はあらかじめ予測できるからである。だから、アクシデントなどによる場合は現行どおりアンパイアの判断で投球を認めるものとする。
5. 投手交代の場合にはタイムをかけ、まずコーチがマウンドに歩き、おもむろに監督が交代を告げに出てくるというのが定着しているが、こうした茶番をやめる。またコーチはフィールドに入ることを禁じる。攻撃のときの一塁、三塁のコーチャーズボックス内は認める。
6. 打者はいったんバッターボックスに入ったら出ることを禁止し、意味もなく出た場合はその打者はアウトとする。(死球をよけるためあるいはファールや空振りなどの勢いで出てしまった時は認める、間をとるとかサインを見るためなどによる場合はだめとする。)
7. 判定に対する監督の抗議は一切認めないこととする。ただ、誤審と思われるケースが多々見られるので、ビデオを再生して確認する権利を一試合2回まで認める。無制限に認めるとかえって長くなる恐れがある。(相撲にはあるしテニスにも似た判定がある)
8. 監督が選手交代を告げに行く場合は駆け足とする。駆け足ができない場合はあらかじめ代人を決めておかなければならないものとする。のろのろ姿はみっともない。ただし、それはそれでいいという見方もあるかもしれない。
9. 試合時間を定める。例えば2時間半と決めるのである。このくらいの時間であればトイレも我慢ができよう。試合中に席を立つのはその列の人に気兼ねがいるものだ。
5回であろうが7回だろうが、攻撃中であろうが守備中だろうが関係無しにする。イニングは裏表の攻撃が終わってからということを考えがちだが、この提案では、そういうことは無視する。時間が来ればそれで終わりである。時間切れを狙った引き伸ばしプレーなどに対しては、アンパイアが、柔道の“指導”と同様に何らかの処分を下す。例えば、指導二回で1点ではどうだろう。当然、時間の経過を考えなければならなくなり、やるほうも見るほうも緊張感が出て、ずっとおもしろくなると思うのだが・・・・。これには、野球は9回までという既成概念を取り払う必要があるから相当反対がでるであろう。
  勝負がつかないと面白くないという人も多いだろうから、制限時間内に勝負がつかない場合のために、プレーオフを導入する。方式は、ソフトボールなどと違って、3人ずつ打者を選んで打たせ、ヒット数の数で勝敗を決める。この場合、1塁打、死死球は1点、2塁打は2点、3塁打は3点、ホームランは4点とする。
といったところである。

野球を面白くする方法で実行可能なことは、一にもニにもスピードアップである。ただし、贔屓チームが勝つことだけを願うファンにはあまり関係ないかもしれない。

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